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Vol.2
このメルマガは、ディスペンサーのトータルソリューションを提供する(株)サンエイテックがお送りする、エンジニア向けWebマガジンです。 『近未来の快適デジライフ』と題して、身近な製品の半歩先の世界をお届けします。 |
近未来① 知らない間に手術が終わっている日がくる?!「医療用MEMS」
近未来② 120年ぶりの「新しい光」が、実現間近「白色LED」
ここは、病院の手術室です。「それでは、手術を開始します。メス…じゃなくて、カプセル」「はい先生」「じゃぁ、あ〜んしてください」「あ〜ん(ごっくん)」「…モニタ正常、カプセル展開、各プローブ正常に作動しました」「はい、じゃぁ、6時間は激しい運動をしないようにね。なるべく安静にしていれば、普通にしてて大丈夫ですよ」「ありがとうございます」「ハイ、お大事にね」…。
こんな風に、患者さんにとっても、ドクターにも負担や危険が少ない手術の実現。夢のような話ですが、実は、もう既に始まっている技術なんです。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems/微小電気機械システム)は、簡単にいえば、例えば□5mm程度の極小基板に制御回路やモータ、CCDなどのデバイスを搭載したものです。実は、この技術は既にある程度の実用化も進んでいます。昨年発表された「カプセル型内視鏡」は、通常の薬よりもやや大きめのサイズに、CCD、発光ダイオードを備え、毎秒30枚の撮影ができます。これにより、消化器官の疾患をより迅速に発見することができ、それだけ精度の高いケアができるようになりました。更に「多機能能動型カテーテル」は、直径3mm程度のチューブに、形状記憶合金(SMA)のコイルに通電して収縮させるアクチュエータを搭載していて、クネクネと柔軟に動かすことができ、血管内を通して体内へ挿入することができます。このチューブの先端に、微細なメスや、フックを取り付け、患部の組織を採取したり、腫れている部分を切除したりといった動作も既に可能となっています。これが普及すれば、狭心症や心筋梗塞も早期の発見、治療が可能になり、更に、開胸手術などの、大掛かりな手術・入院も不要になります。今はまだ機材を導入している病院も少なく、限られたケースでしか使われていませんが、その件数も徐々に増え、その分、機能の実証も進んでいるのです。つまり、「痛くない手術」「日常生活のままの治療」とは、もう目の前まで来ている“未来”なのです。
上で紹介した「カプセル型内視鏡」ですが、実は筐体には「開き空間」があります。というのは、将来的にはこの空間に「薬剤噴射機構」を納める計画なんだそうです。つまり、冒頭のストーリーのように、カプセルを飲み込めば、あとはカプセル自身が患部をターゲッティングして、薬品を直接噴射することを考えているわけです。これなら、使う薬品も最小限ですむし、副作用の危険性も抑えられるわけです。このように、目標に向かって、自律的に動作するところから「ミサイル医療」と呼び、次世代の「DDS(ドラッグ・デリバリ・システム)」として、研究・開発が進められています。…などなど「良いこと尽くめ」に見える、医療用MEMSですが、問題点が全くないわけではありません。例えば「能動的カテーテル」では、体内で展開させたデバイス部分への組織の付着がないか、それによる感染症をいかに防ぐかなど、「機器以外」での研究を詰めなければなりませんし、また、「ドクターが使いこなせるか」や「機械を体の中に入れることへの不安」なども残されています。もっとも、新技術を確立するには、「山あり谷あり」で当たり前。それをクリアできてこそ「快適な未来」と、言えるのではないでしょうか。
勿論、このMEMS技術は、医療にのみ用いられるものではありません。例えば、超微細なプリンタヘッドや、自動車の燃焼制御、プラントのメンテナンスなど、多方面への展開・開発が進んでいます。これらについては、また、機会を改めてご紹介したいと思います。
最近は、「LED照明」と銘打つ製品もポピュラーになっていますが、意外にも照明器具としての「白色LED」は技術的に困難なものでした。そもそも、普通の白熱電球でも、フィラメントの発光そのものはオレンジ色で、白く塗ったガラスを通して白色光を作り出しています。一方のLEDでは、赤(R)、緑(G)、そして青(B)の三色の混色で白色を作ったり、青色光を蛍光体材料に当て、その反射光の混色により、白色を生み出したりしていました。しかし、これらの方法では、色の安定性・演出性に劣っていたり、LED一個の発光効率が低く、日常の「照明」に用いるには、百個単位のLEDを並べる必要がありました。しかし、このたび青色LEDと蛍光体を組み合わせる方式で、100lm/Wと高効率の白色LEDが発表され、今年の末からは出荷も始まるそうです。これがラインに乗れば、効率的で省電力、ランプ切れもないのでランニングコスも低く、しかも水銀などの環境負荷が少ない、「究極の照明」が完成することになります。
白色LEDの現在の利用状況は、その演色性の高さから、テーブルに置くキャンドルライトやダウンライトに用いられていたり、高級乗用車の室内照明に採用され「大人の空間」を演出しています。更に、白色LEDヘッドランプの開発も進んでいます。これはエネルギ変換効率の高さに併せ、複数のLEDにより照射の角度や方向を可変させるAFS機能との兼ね合いも考えられます。残る問題は、初期コストの高さですが、それでも0.1Wクラスの小電力型で30円程度と、かなり低下しています。これが普通の電球と同等になれば、おそらくLED照明への切換えは一気に進むことになるでしょう。つまり、1879年にエジソンが日本の竹を用いた白熱電球を作って以来の「変革」となるのです。