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Vol.3
ディスペンサーのトータルソリューションを提供する(株)サンエイテックがお送りする、エンジニア向けWebマガジンです。 『近未来の快適デジライフ』と題して、身近な製品の半歩先の世界をお届けします。 |
近未来① 小さいからこそ、お役に立っています「産業用MEMS」
近未来② あなた自身が鍵になる? 「バイオメトリクスと画像認識」
…先日、新しいカラープリンタを買いに行ったんですよ。そうしたら、最近は動くヘッドなんて、付いていないんですね。わたしの事務所の古いプリンタなんて、電源を入れると「きゅいぃ〜ん・きゅっ・きゅっ」っていう予備動作をして、あれが結構かわいいんですが…なんでも、最近は「MEMS」とかを利用していて、小さいヘッドが帯状に並んでいるんだそうですよ。すごいですよね…ところで、MEMSって何でしたっけ?
前回は「医療用MEMS」を紹介しましたので、今回は日頃目にする、いわゆる「デジタル家電」の中で、既に活躍している技術を紹介しようと思います。まずは少々おさらいですが、MEMSとは、一つのチップ上にメカニカルな機構と電子回路を併せ持ったものです。その代表が上記にもあります「プリンタヘッド」なのです。従来、「高精細」を謳うプリンタでは、色を何層も「重ね塗り」して色合いを表現していましたが、その分塗膜が厚くなるという欠点がありました。しかし、MEMS技術を用いたプリンタヘッドでは、これも解消できているのです。例えば、あるメーカーのプリンタには指先ほどの極小スペースに、6,000個のヘッドを備えていますが、これこそMEMSで、ウエハの上に特殊樹脂で成形したノズルやヒーターなどを搭載しています。また、ノズル口径は10μm以下を実現し、そこから吐出されるインクはピコリットル単位の精度を持ち、色を重ねることなく「整然と並べて」着弾させることができるようになったのです。
もう一つ、MEMSの代表選手を挙げるなら、やはり携帯電話でしょう。こちらに使われている技術としては「加速度センサ」があります。つまり、最近の携帯電話にはGPS機能がありますが、そもそもこのシステムには、電波を受信する側が移動しているときには、正確な位置把握ができないという欠点がありました。それを解決したのが「MEMS加速センサ」です。方式は各社あるようですが、一般的にはチップ内に備えたビームが加速によってズレ、その静電量の変位から、方位と速度を検出するものです。これにより、歩きながらのお店探しや、待ち合わせの相手がどこにいるか、正確に把握できるようになったのです。
最近よく聞く言葉に「指紋認証」や「静脈認証」というものがありますね。例えば、会議室のドアを開けるのに指紋を読み取らせたり、銀行で預金を下ろす時にリーダに手首をかざしたりするアレです。これは、CCDや赤外線画像処理などのイメージセンシング技術を用い、指紋や掌紋、更には皮膚下の血管のパターンを認識、ストック画像と比較しOKを出すというものです。なんだか、「SFが現実になった」という気もしますが、実は問題も抱えているのです。
生体認証の弱点は、それが「画像認識」であるが故に、不完全一致をどう切り分けるかの見極めが難しいということにあります。簡単に言えば、「カッターで掌切っちゃって、線が増えちゃった」というとき、NGと判定するか、OKとするのか…、閾値を上げれば本人を拒否し、緩めれば他人を誤認してしまうというジレンマが問題になっています。更にデータを盗めば、指といえど偽造も可能で、指紋をつけたダミーでもOKが出てしまうという実験もあるそうです。また、データを改ざんすれば「本人」であっても、NGと判定してしまいます。
勿論、この悩ましい問題も、解決のための努力はなされています。一つは、従来の暗証番号など、すぐに確認ができるものを併用すること。もう一つは、解決というよりは対策で、スキャンデータをわざと「歪ませて」保存すること。そして、そのデータは修復できないように加工しておけば、少なくともハッカーがアクセスしても「元画像」は入手できなくなるという仕組みです。そして、正規のユーザーが使うときは、入力した画像も歪ませて照合するので、OKの判定が出せるという、一種の逆転の発想ですね。
このように「生体認証」は発展段階にある技術といえます。つまり、使う側もこのことを理解して、いかに工夫し色々なデバイスを組み合わせるかが、これからのテーマ。結局、最後の鍵は人間自身ということになるのでしょう。