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Vol.6
このメルマガは、ディスペンサーのトータルソリューションを提供する(株)サンエイテックがお送りする、エンジニア向けWebマガジンです。 『近未来の快適デジライフ』と題して、身近な製品の半歩先の世界をお届けします。 |
近未来① 「携帯電話から自動車まで」…燃料電池はエネルギー問題の万能選手になりうるか?
近未来② 「街角からポスターがなくなる日が来る?」電子ペーパーの現状
「よう、後輩。喫茶室で仕事とは、できる若手は違うねぇ。でも、電源を繋がない状態で、大事な企画書が途中で消えても知らんぜ?」「それなら心配ないですよ。これ、燃料電池パソコンですから…って、なんで後ずさりしてるんですか? 先輩」「だって水素で動いてるんだろ? ボンッて、いかないのか?」
最近、言葉はよく聞く“燃料電池”ですが、実際のところは、案外知らないままなのではないでしょうか。そこで、今回はその開発状況の紹介です。
燃料電池は一言でいってしまえば、「水の電気分解を逆にしたもの」と言えます。つまり、水素と酸素を化学反応させて「水」をつくると、同時に「電気」も発生する。これを取出すシステムであり、蓄電池というよりは「化学反応式発電器」と呼ぶべきものです。燃料としては純水素を用いるタイプと、メタノールや都市ガスから水素を取出すタイプに分けることができます。理想は純水素を供給する方式ですが、冒頭の先輩氏ではないですが、「安全性」を考えると、やはり問題が多く、現在ではメタノール系が主流になっています。
逆に欠点としては、現状で最も問題になっているのは、複雑な装置が必要な割には、発電量が伸びてくれないことでしょうか。つまり、メタノールから水素を取出す際に、水素イオンだけを透過させたいのですが、これが思うように進まないこと。メタノールの濃度を上げれば、それだけ発電量も上がるのですが、この問題が故に、低濃度液を使っているのが現状です。また、温度が高いと反応が進むため、発電効率も上昇するのですが、逆に温度が低い状態では反応も進まず、特に自動車のような起動時に大きな電力を必要とする機器には、大きなネックとなっています。更に、仮に「高温保持」ができたとすれば、今度は他の機器への熱対応を解決しなければなりません。そのための温度管理も、特にモバイル機器向けとしては重要なポイントになっているようです。
と、問題点を列記してみましたが、「製品」としての現状は、それほど暗いものではないようです。例えば、先日の「先進技術見本市」では、出力約500mWで、内蔵しているLiイオン2次電池との併用で、7時間程度の動画を視聴できる携帯型プレーヤや、内部で希釈するダイレクト・メタノール型で、平均出力13W、最大20Wを実現した燃料電池式パソコンなどが展示されました。またアメリカの展示会では、参加者に携帯型音楽プレーヤ用の平均出力1.3W、最高出力電圧5.6Vの使捨て型燃料電池が送付されるイベントも催されました。これらは、いきなり「完成形」を目指すのではなく、既存技術との組合わせによって、一つ一つの精度を高め、パッケージとしてまとめたものといえます。
一方、もう一方の「自動車向け」も、開発当初は、発電効率の低さによる出力不足に悩まされましたが、現状では国内の2メーカがアメリカでの実車リース販売を開始できるレベルになっています。更に、氷点下20℃での始動や、大幅な小型化と高出力化を実現というリリースもあります。残る問題は燃料供給ですが、NEDO技術開発機構の省エネルギー政策による、インフラ整備もあるので、こちらも決して「暗闇」のままではないようです。
もう一つ、最近よく耳にする言葉に「電子ペーパー」がありますが、実は、既に私達の身近で活躍してるんです。といっても、公共施設の情報伝達が主な用途で、モノクロ表示ですが、表示情報を配信するためのサーバやルータ、管理ソフトなどを組合わせたシステムとして提供され、JR東京駅などで稼動しています。このディスプレイ、実は液晶ではなく「電子紛流体」を用いているのが特長でした。これは、粒子でありながら液体のような特性をもち、電気に反応し、帯電時には粒子同士が反発する性質を備えています。これを利用して、ディスプレイの表示材料として液晶のように使うことができるそうです。
一方、カラー開発も進んでいて、先日行われた展示会では、4096色のカラー表示ができる電子ペーパーの試作品が展示されました。表示サイズ120mm×160mm、厚さは約0.9mmと薄型ながら、約110dpiの解像度を備えています。構造は3枚の液晶フィルムの貼合せで、レッド、グリーン、ブルーの光をそれぞれ反射することで、多色表現を行うというものです。また、表示サイズについても拡大が進んでいて、韓国のメーカーが14.3型のフレキシブルな電子ペーパーを発表しました。これらは、これまでに開発されているタイプと同様、消費電力が低い、電源を切っても消えない、曲げられるといった特長を備えています。
これらの技術を用いれば、街中のポスターは単なる一方通行の「お知らせ」から、「身近な情報発信ステーション」へと進化するのかもしれません。つまり、ビジネス、ショッピングなど、時間帯に合わせたメッセージの切換えや、災害情報のいち早い伝達に用いることができるようになることが予想されます。また、自分のモバイル機器などを接続して、サーバから必要な情報を取出すことができるようにもなれば、まさしく「ユビキタス時代」の到来といえるでしょう。それも、思っているよりもすぐかもしれませんね。