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近未来① 少年時代のSFが現実になる日がすぐそこに…「サイボーグ技術」
近未来② 「容量」の次は、「機能」で勝負? ポータブルプレーヤー
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「サイボーグ」「人造人間」…子供の頃、テレビやマンガの中に出てくるこの言葉に、胸ときめかせた少年少女も少なくない…というより、エンジニアを目指した動機になっているという人も多くいらっしゃるでしょう。その頃は、本当に「架空の物語」であったものが、現在、現実のものとなりつつあるのです。今回は、最新のサイボーグ技術について紹介します。
そもそも、私がどうやって腕を動かしているのかといえば、脳の運動野から、「右手を挙げて」という命令が発信され、それが「脳→脊髄→腕の神経」と伝わり、筋肉を指令通り伸縮させるからです。この指令が「筋電位」と呼ばれるもので、微弱な「電気信号」であるということがポイント。すなわち、この信号パターンを制御信号として、ロボットアームのモータやアクチュエータに送ることができれば、脳の命令(イメージ)どおりに持ち上がってくれるというのが、ごく簡単な「原理」です。そして現在、実際にこの筋電信号で動くロボットアームを両腕に装着した方が、アメリカで生活しています。この方は事故で、肩先から全てを失ってしまったそうですが、ロボットアームにより、「普通に物を掴む」程度のことは不自由無くできるようになったそうです。
この義肢の問題は、「思いの通りに操作できるか」という点ですが、日本の研究機関ではジャンケンなど、特定の動作の電位パターンを予め記憶させる方式を開発しました。この方式を用いると、パターン化された動作ならば10分程度で習得できるそうです。つまり、このパターンを増やしていけば、思いのほか「簡単に」ロボットアームを動かせるのではないかと期待されています。また、この筋電位信号を用いるものに、外装型のサポートデバイスがあります。こちらもSFではおなじみの「パワードスーツ」や「外骨格」が現実になったと言えるもので、装着した人の筋肉の動きを皮膚表面から読み取り、倍力装置として重さを支えるものです。こちらも開発は急ピッチで進んでいて、先日は人を背負ったままで登山もこなし、しかもフレーム自体が接地するので、装着者に過度な重量負担を受けないという優れもので、今後は、下肢障害のある方のサポートや、介護分野、災害救助時の活躍が期待されています。
この技術は、いわゆるマン-マシン・インタフェース技術として、医療のみならず工業製品の生産現場や宇宙開発まで、大きな発展性があると考えられています。つまり、グローブに電位センサを仕込めば、現在以上に複雑な作業ができる精密ロボットが誕生するでしょうし、海底や原子炉など、通常の人間が入れない環境下での修理などにも応用できるでしょう。
一方、問題点としては、義肢については「重さ」、つまり、いくら軽量とはいえ、重い金属部品を支えるには、子供や女性の場合不安があることや、神経と配線を直に接合する場合、アレルギーなどを発症しないかという不安もあるようです。また、工業機器としての問題点は、複雑な作業をこなせるようになれば、その分故障もしやすくなる。ましてや、原子炉内での作業中に不意に停止してしまったら、どのようにバックアップするのかなど、できなかったことができるようになるが故の、新たな問題が発生してしまっているようです。
どんな新技術も「完全な完成」はありえません。如何にすばらしいものでも、常に問題点を検証する慎重さも必要で、その意味では、ロボットアームはかえって「順調に開発が進んでいる」と言えるのかもしれません。
「音楽を持って外出する」…カセット式のヘッドホンステレオが発売されたのが1979年。それから28年、すでにカセットテープ自体も少なくなり、今では昔のコントローラよりも小さい「本体」で、何万曲の容量を持つHDDプレーヤーも出現しました。小型化・軽量化・高性能化と技術の進歩の代名詞ともいえるこの「携帯音楽プレーヤー」のこれからを見てみましょう。
現在、デジタルポータブルプレーヤーで最大のメモリ容量を備えるのは、最も人気のある「あの機種」のHDDタイプで80GB、音楽集録時間2万時間というモデルがあります。他にも、40〜60GBの容量を持つものも多数あり、1〜2年前のデスクトップパソコンよりも遥かに豊富な容量を誇っています。
ところが、最近ではこの「大容量化」の流れに、少々変化が生じているようなのです。すなわち「大容量化は価格を押し上げ、ユーザー離れを招く」という考え方で、携帯電話との融合をはじめ、マイクロソフト社は容量こそ30GBと標準ながら、LAN 接続やFMチューナを内蔵した機種を発売し、また、韓国のメーカーは、脈拍や消費カロリーを測定する機能を搭載し、同社製のパソコンソフトと連動させてバイオリズムの測定ができるという「付加価値モデル」を発表しました。一方、この分野での老舗中の老舗、日本のメーカーも「ノイズキャンセル機能」を搭載し、雑踏の中でもクリアな音質が得られるという、「オーディオの基本に立ち戻った」モデルをリリースしました。単にデータ容量のみでも、極小基板、データ圧縮と、高度な技術が必要なのですが、付加機能を増やせば、当然精密な制御機能が要求されます。市場のニーズがあるとはいえ、無くなって困るものではないものに、これだけ尽力する…むしろ、そのような絶対必要ではないが、生活のパートナーとしては欠かせない存在であるからこそ、エンジニアも力を注げるのかもしれません、つまり「こだわり」としての技術開発が、その原動力になっているのかもしれませんね。
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