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近未来① 遥か遠くの情報も、簡単に手元にお取り寄せできる「無線技術」
近未来② 新しい企業の価値・ブランド力となるか「環境技術」
とある昼時、家電量販店の前にて…「お、何かイベントか? ずいぶん人だかりができてるな」「ああ、あれは、この店オリジナルのキャラを取りに来たんですよ」「キャラ? ああ、フィギュアとかなんかか?」「違いますって、ゲームで使えるキャラを無線でダウンロードするんですよ…さてと、ちょっと僕も行って来ますんで、先輩、先に戻っていてください」「って、おい、ちょっと…お前いつの間にゲーム機なんかもって」「昼休み中には戻りますから〜」
上記のエピソード、実は既に行われているサービスです。店舗に限らず街中にある無線LANスポットに、この機能を搭載した携帯ゲーム機を近づけると、ゲームのキャラクターやアイテムをダウンロードできるというもので、家電量販店などでは「そこでしかGETできないレアもの」を入手できるということもあります。更に、このサービスに対応したソフトを内装したゲーム機同士を接近させると、自動で「トレード」が行われたり、通信対戦の「お誘い」を掛けてくれるなど、ゲームの世界では「無線を通したやりとり」は、かなり浸透しているようです。
また、個人が持つ情報端末といえば、なんといっても「携帯電話」です。上記のゲーム機と同様に公共無線LANスポットを利用し、ショップの情報や、観光地の情報などを入手するサービスが一部の地域で始まっています。これにより、従来一旦HPなどにアクセスしていた手間を省くことができ、例えばレストランの空席状況などをリアルタイムで検索できたり、映画館などで独自の映像をダウンロードできたりなど、多様な展開が考えられているようです。更に、この公共のアクセスポイントや一般の家庭に導入されているポイントの通信範囲では携帯端末をコードレス電話機として利用でき、それ以外の場所では通常の携帯電話として機能するというサービスも運用が間近と言われています。
もう一方、自動車業界でもこの無線技術の活用が急速に進んでいます。更に、ある自動車メーカーは、自社製のカーナビを搭載した自動車で一種のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を形成し、その道路を走っているクルマから、リアルタイムの道路状況や駐車場の空き情報などを収集したり、更には降雨情報などを収集し、それを会員の各クルマに配信するという、きめの細かいサービスが行われています。
これらを実現しているのが、新無線LAN規格のWiMAXやWi-Fiで、WiMAXはIEEE802.16a規格とも呼ばれ、2〜11GHzを利用するもので1台のアンテナで半径約50kmをカバーし、最大70Mbpsの通信が可能です。もう一方のWi-Fiは5.2GHz帯・約54Mbpsの通信を行なう仕様となっています。これらに加え、音楽や映像のデータ圧縮技術の進化。そして、公共域でのアクセスポイント数の増加というインフラ整備により、サービスの質、量とも急速に拡大したと言えます。そして、これが更に進化すれば、ニュースや天気予報は、自宅で見るものではなく、移動中にリアルタイムの情報を、簡単に入手できるようになることでしょう。それももうすぐなのかもしれません。そうなると、出掛ける際の「あ、ケータイ忘れた!」というのが、ますます一大事になるかもしれませんが…。
最近急速にシェアを伸ばしている韓国・台湾のIT企業、特に薄型ディスプレイなどの分野では、低価格を武器に、日本製品を引き離すのではないかという市場の観測さえあります。これらに対し「ものづくり大国」としては、どのような「次の一手」を打つのか…キーワードは「環境技術」でした。
実は、韓国・台湾勢への対抗策は勿論ですが、それと同じほどに気を揉んでいるのが「京都議定書の実効」です。この数値目標のクリアこそ、世界市場での生き残りには必須の要件とも言えるのです。具体的には、CVD装置向けのクリーニングガスに、三フッ化窒素(温暖化係数10800)を用いてきたものを、フッ素ガス使用のプロセスを開発し、除去装置を使用しても多少残存していた二酸化炭素換算排出量をゼロにしたと発表しています。他にも、海外の生産拠点に、膜処理技術の強化により月1万トン以上の排水を処理し、そのうち約2,000tの水を工場で再利用する循環型の排水処理システムを導入した電機メーカーもあります。更に、廃棄プラスチックを熱分解により、燃料油に戻す油化技術や、コークス炉の副生ガスに含まれる水素ガスから液体水素を精製し、それを「燃料電池」に活用する技術など、新たな「イノベーション」ともいえる挑戦として、開発が進められています。こうした取り組みにより、「価格」や「性能」に加え、「企業としての信頼性」を向上させることが、新たな「強み」・「ブランド力」になるというのが、各社とも共通した認識のようです。
2006年7月1日にEU(欧州連合)で施行されたRoHS指令。更には2007年3月1日には中国でも同様の法案が施行されます。これにより、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなどの重金属類の排出が厳重に規制されます。つまり、「輸出」も「海外生産」も重要な要件である日本にとって「環境対策」は、現代・そして将来の課題であり、技術者にとっては「やりがい」なのでしょう。