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近未来① 遊びと侮ることなかれ…「学習系ゲーム」がスゴイ事に
近未来② 「エンジニアリング素材」は、もはや回路の中だけに在らず
…ぴろりろ〜ん「げ!オレの脳年齢、54歳だって」「あ、ホントだ。先輩、少しは頭にアルコール以外の刺激入れた方がいいんじゃないですか?」「うるさいな、こんなのただのゲーム、遊びじゃないか」…まぁゲームに限らず、負けた人が良く口にする台詞ですが、実は、これらの「脳トレゲーム」が現在、ただの「遊び」では終わらない広がりをみせているようなのです。と、いうことで、今回はそんな「デジタルゲームと学習」について紹介します。
上の二人が楽しんで(?)いるのは、いわゆる「パズルゲーム」の一種で、反射神経や図形判別能力から、脳の活性度を「年齢」という形で表現したものですが、いわゆる「脳ゲー」が、コンピュータゲームのジャンルとして登場したのは2003年、携帯電話に搭載されたものが最初と言われています。しかし、この分野を社会現象にまで押し上げたのはやはり、川島隆太・東北大学教授が監修した『脳を鍛える大人のDSトレーニング』シリーズでしょう。これ以降、各携帯ゲーム機において、ありとあらゆる教育分野の専門家がコンテンツ作りに参加し、今や主要ジャンルにまで成長しました。更に、実際に中学校の授業にも導入され、「数ヶ月で英単語の語彙が平均で約350語から400語に増えた」という実績も上がっています。また、「ゲームを用いた学習法」の流れはドリルにとどまらず、例えば企業においては、パソコン用の新入社員向け「ビジネスマインド育成」や、幹部育成研修に「経営シミュレーションゲーム」を用いたりと、もはや「ゲーム=遊び」とは言えない状況になっています。
人間がモノを覚えるのには、「短期記憶」と「長期記憶」の2パターンがあり、このうち、短期記憶を担当しているのが、脳の中心部分にある「海馬」という場所で、例えば「人の名前と顔の一致」や、「これ、5枚ずつ20部コピーね」などの、比較的「軽い要件」を担当しています。一方長期記憶は、「大脳新皮質」という、文字通り脳の外側の「皮」の部分で行われています。ここでは海馬で情報を繰り返しやり取りしながら、「重要度の高そうなもの」を抽出してメモリする仕組みになっています。しかし海馬はストレスに弱く、強い心理的圧力を受けると簡単に機能不全に陥ってしまいます。実は、この「繰り返し」と「ストレス」がポイントで、「ゲーム性」の付加によって「繰り返し何度でも」「ストレスなく、楽しみながら」問題に取組むことができるのです。勿論、レベルが上がれば、ある程度の「ストレス」を感じることになりますが、それも「繰り返しのチャレンジ」でクリアしていけば「達成感」に結びつけることができ、ここに相乗効果が生まれているのです。更に、タッチペンを用いることによる手からの刺激や、動画や声が加わることでの目・耳からの刺激と、単に「教科書」をめくる以上に、複層的な刺激が得られ、より高い学習効果がもたらされるのではないかと言われています。
実は、こうした「玩具以外のゲーム」は欧米では既に一般化していて、上記の経営シミュレーションなどは「シリアスゲーム」と呼ばれ、教育機関でも積極的にソフト開発が行われています。これは日本にも波及しており、Xbox360の教育機関への特別購入プログラムや、ソフトメーカーと教育関連企業との連携なども始まっていまっていて、「ゲーム」を教育ジャンルとして確立させるものと期待されています。更に、以前紹介した携帯ゲーム機の通信機能を用いた「同時対戦」と、自分でゲームをアレンジできる編集機能を脳トレに応用できれば、偶然集まった何人かでオリジナル問題を出し合い、それが新しいコミュニケーションの一つになる、そんなことも可能になるかもしれませんね。
「シリコーン」「セラミック」などと言うと、どんな製品を想像するでしょうか?「半導体」「家電」など、いわゆる「エンジニアリング素材」でしょう。勿論、これらがメインではありますが、最近は、実に意外な利用・応用・発展方法が開発されています。次はこれらについて見てみようと思います。
まずは、現在最も応用範囲が広がっているものとしてシリコーンが挙げられるでしょう。エンジニアリング用途としては、ゴムやレジンなどとして用いられていますが、これをパウダー状に加工し、「スキンケア」「ヘアケア」などに用いられているのです。つまり、オイル状のシリコーンを架橋・硬化させるとゴム状の微粒子になり、これを他の樹脂素材に配合すると、均一で滑らかな肌触りが得られるということです。この粒径を大きめに制御すると、マッサージ効果のあるスクラブとなるなど、実に多様な製品に用いられています。他にも、厚さ約0.7nmの薄片状の酸化チタンをクリームに配合したUVカット製品、酸化還元電位の異なる金属2種類を用い、その電位差によって発生する電池の作用で、水中の浮遊微生物の生体電流を引き付ける除菌装置、円形のセラミックに直径100〜1000μmの穴を規則的に並べ、ゼラチンを用いずに細胞を培養するベースなどなど、応用範囲はまだまだ拡大しています。
これらは全て、素材の基礎的機能を違う方向から活用しようという試みから生まれたものです。こうしてみてみると、日本のエンジニアは、この類の「応用力」「アレンジ能力」に長けているように思います。基礎技術のブレイクスルーは、もうしばらくはやってこないだろうとも言われている今日だからこそ、こうした「今あるものを組み合わせる」「既存の技術を別の方向から見る」というスキルは、とても大切なのではないでしょうか。
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