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近未来① 「非現実」が現実を向上させる「ヴァーチャルテスト」
近未来② 人気沸騰中のリモコン玩具…その裏には、意外に身近な技術が
「衝突まで、あと5・4・3・2・1…衝突」「各Gセンサ、および変異センサ、正常にデータアップ」「搭乗者A前席左、頭部損傷度3プラス」「搭乗者B後席右、頭部損傷5マイナス・胸部損傷6プラス」…これはとある自動車開発の実験の模様。しかし、彼らの前には車両もダミー人形も、それらをぶつけるバリアもありません。あるのは、パソコンのモニタのみ。そう、これは仮想空間を用いた「ヴァーチャルテスト」。今回は、その驚きの進化を紹介します。
自動車の強度設計や安全評価は、通常「実験場で車をバリアにぶつけ、中の人形がどの程度加速度を受けたか」で判定します。しかし、それが実際の事故ではどの程度有効なのか、今ひとつ疑問視する声がありました。
一方、設計解析の現場では、気流の速度や、摺動による変形、燃焼の熱に対して構造体が受ける応力を、かなりの精度で再現する事ができるようになっていました。これを応用・発展させたのが、この「ヴァーチャルテスト」です。
つまり、衝突によって、どのような加速Gが発生するのか、乗員がどのように揺さぶられるのか、それが速度や路面状況、更には乗員の体格・体重などの「付加要素」によってどのように変化するか、きめ細かい設定により検証できるようになりました。これを可能にしたのは、要素解析ソフトの高精度化と、それを動かすための並列計算型スパコンの導入などがあります。
つまり、コスト的にも時間的にも不可能だった実車を壊しての再現を、これらの仮想空間の充実によって「実現」し、現代の自動車の安全性を向上させたといえるのです。
勿論これは、自動車業界だけの物ではありません。
例えば航空機の場合なら、実物の何十分の一のクレイモデルに、空気を吹き付ける「風洞実験」がおなじみでしょう。確かに、機体の表面をどのように空気が流れるのかを視覚的に再現でき、非常に有効ですが、実際にはフライトごとで重量も異なれば、上空では一方向しか気流が来ないということもあり得ません。例えば、翼の燃料タンクが満タンの時と、使い切った頃では「しなり」に違いがあるはずですし、分刻みに変わる風向・風速が機体をどう揺らすのかも検証する必要があります。これらを可能にするのが、「ヴァーチャルテスト」なのです。
更には、例えば船舶の設計においては、仮装空間上で「実際に船を氷山に衝突」させ、海水がどのように侵入するか、沈没までどの程度の猶予があるのか、避難経路を如何に作成するかなどの検証も行われています。
このように「実際に行えない事」を再現できるのが最大の特長であり、これを発展させてゆけば、例えば、よりきめの細かいメンテナンス計画を策定できたり、災害を最小限に食い止めるレイアウトなど、様々な方面に活用できるでしょう。それは、ソフトの充実とともに順次行われるはずですが、それも、もうすぐなのではないでしょうか。
しかし、このような優れた技術も、やはり「シミュレーション」。実際にはもっと複雑な要素が絡み合います。ですから、これらの技術が如何に進歩しようとも、あくまで「人間をサポートするもの」、そういうスタンスで、自分が主体であるべきでしょう。その意識さえ持っていれば、機械と人間の未来は明るいものであり続けるのではないでしょうか。
「先輩、ビンゴゲームで何当たったんですか?」「なんだこれ? おもちゃのヘリコプターか」「あ、それ“室内用リモコンヘリ”ですよ! 今すごい人気で、どこいっても売り切れなんですよ」「そういえば、なんか最近リモコンものって、増えてるよな。なんでだ?」「そう言われれば、なんでなんでしょ?」
リモコン玩具の概念を破る最初の一歩は、2003年に発売された「CHORO MODE(チョロモード)」と言えるでしょう。言うまでもなく、かの『チョロQ』の一つで、「コントローラ」が携帯電話で、キーのプッシュトーンを信号として、方向や速度を操作できるというものでした。
更に、組込まれたキーワードを入力するとパターン走行ができる「メールモード」など、小さいながら充実した機能を搭載していました。現在は新しいブランドとして、制御アプリをダウンロードし、操作できるようにまで発展しています。
また、手軽に楽しめる「リモコン」は他にも、「室内専用飛行機」「室内専用ヘリコプター」と、多数リリースされています。これらは、従来電波のみだった「リモートコントロール」のソースに、トーン信号(音)や赤外線(光)が加わったということであり、これが発展すれば、雑音の多い環境での無線操作など、産業現場へのフィードバックも考えられるでしょう。
リモコン玩具 もう一つ「小型リモコン」が充実している理由に、携帯電話の技術が転用されています。 その代表選手が、「振動用小型モータ」を動力として用いること。
他にも、基板自体の小型化や、複雑形状部品の低コスト生産など、携帯電話の基本技術である「小さい要素を動かすワザ」が凝縮しています。つまり「小型リモコン玩具」とは、一種の最先端機器とも言える物であり、一つの技術の応用が、他の何かを充実させた好例と言えるのではないでしょうか。
これらの「小型リモコン機器」が更に発展すれば、「マイクロマシン」がいよいよ現実のもとなるでしょう。 その可能性は、すでに計画されている物でも、原子炉やエンジン内のメンテナンスから医療用途まで、多種多様な展開があります。
「色々な機器の特長を集約すると、新しい技術が生まれる」というのは、何よりも望まれる未来といえるのではないでしょうか。
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