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Vol.20
このメルマガは、ディスペンサーのトータルソリューションを提供する(株)サンエイテックがお送りする、エンジニア向けWebマガジンです。 『近未来の快適デジライフ』と題して、身近な製品の半歩先の世界をお届けします。 |
近未来① “駅弁”“空弁”の次は、“宙弁”が……? 「宇宙エレベータ」
近未来② 環境新時代のシンボルとなるか、新型ハイブリッド車
(3番ホームに停車中の列車は、12時00分発……)「先輩、忘れものないっすか?」「だいじょーぶだって、お前も心配性だな」「そんなこといったって、“書類忘れた”っていっても、バイク便じゃ届かないんですからね」「……まぁ、な。なんせ地上36,000㎞だし」(ステーション特急、まもなく乗車手続きを開始します、ご利用の方は改札ブースに……)「おっと、もういかなきゃ」「先輩、帰りに、低軌道ステーション名物の“真球ミートボール”と“黄身が真ん中温泉たまご”忘れないでくださいよ!」「って、そっちかい!」20XX年のある日「列車で宇宙へ」。これはSFではありません。壮大かつ確実に前進している「宇宙エレベータ」について、ご紹介します。
2008年11月、ある重要な会議が日本で開催されました。曰く「宇宙エレベータとはどんな物か」、「どこまで実現できているのか」などについて、「日本宇宙エレベーター協会」と、実際に商業運行を計画している企業が開催したものです。では、そもそも宇宙エレベータとは如何なるものか。最も有力とされている方式は、まず地上36,000㎞の静止軌道にベースとなる人工衛星を置き、そこからテザーを降ろすやり方。「静止衛星」というくらいですから、地上と衛星の位置は一致しているので、鉛直に降ろすことが可能。それを、地上でキャッチすれば、「完成」です。勿論、本当はもっと複雑で、テザーが地上に近づくことで生じる引力を、逆方向にもテザーを同じ長さ伸ばし、そこで発生する遠心力で相殺したり、先端にアンカーと呼ばれる「おもり」を置く必要がありますが、概念としてはごくシンプルな物です。後はテザーを「レール」に置き換え、そこに運搬用のリフトを置けば、「エレベータ」のできあがりです。ちなみに、「国際宇宙ステーション」の高度は約400㎞、スペースシャトルの飛行軌道が通常約180~580㎞ですから、如何に「桁外れ」なのかが判るでしょう。また、スペースシャトルの打ち上げでは、一回約550億円のコストがかかっています、しかも全重量の90%が燃料関係。つまり燃やしてしまう分、捨ててしまう分なのです。一方の宇宙エレベータは、文字通り「エレベータ」ですから、使い捨て部分がなく、宇宙へのコストは格段に下がる事になるのです。
勿論、難問・難題もたくさんあります。その最たるものが「製造方法」。今のところ、カーボンナノチューブ(CNT)を用いることが確実視されています。このCNT、半導体分野などで実用が始まっている「既存品」です。これが選ばれた理由は、なんといっても鋼鉄の20倍の強度、引張り強度では数10Gpaという剛性面。しかし一方、サイズは数㎜とごく小型という問題があり、それ以上のサイズをつくろうとすると、原子配列に「ムラ」が生じ、強度が一気に低下するという欠点や、製造には非常な高温が必要という問題もあるのです。しかし、上記の「国際宇宙エレベーター会議」の席上、ケンブリッジ大学の研究者からは、「解決への目途が立った」という発表がなされ、製造のイメージ映像まで公開されたといいます。実際、エレクトロニクス分野ですが、触媒駆動加熱CVDプロセスを用い、350℃と低温度でのCNT成長過程なども確立されていますので、これらを発展させるために日本の技術者も取組んでいる最中です。
他にも、低軌道上ではスペースデブリの問題、成層圏では雷や台風と、クリアしなければならない課題は沢山あります。しかし、だからこそ挑戦する。まして、今まで「空想」だったものを、自分たちで実現できるとなれば、力の入り方も格段でしょう。それこそ「未来につながる道」なのですから。