2020年8月28日更新

嫌気性接着剤塗布って難しい?

なるほど!ディスペンサー入門は、ディスペンサーにこれから携われるエンジニア様向けの、塗布技術をわかりやすく解説する入門用コンテンツです。
今回のテーマ嫌気性接着剤は、簡単で速硬化できるのが特徴で、幅広い用途で使用されているのが、塗布装置にとって、その取扱いの難しさに課題がありました。今回、エコペンについて、その適合性を実験し、良好な結果を得ることができました。
嫌気? 空気が嫌いな接着剤ってどういう意味?
嫌気性接着剤は、すなわち「空気の遮断」と「金属イオンとの接触」によって、はじめて固まる接着剤のことじゃ。
ネジを締めて空気が遮断されると硬化するのさ。つまり、空気が遮断されるまでは固まらないので、とっても作業がしやすいんだ。 しかも、常温、速硬化で手間要らず。
ゆるみ止めの他にも、モーターシャフト、ベアリングなど軸のはめ合い部分にも使われていて、ディスペンサーの用途もいろいろあるんだぜ。
嫌気性接着剤は、振動などによる金属部品のゆるみ防止と共に、腐食や錆から接合部を保護する目的も兼ねてるんじゃよ。
ただ、その特徴から、空気に触れるはみ出し部分は硬化しなかったり、貼り合わせる時に空気を巻き込むと硬化不良が生じたりなど、取り扱いが難しいと言われておる。
まぁ、私みたいに一筋縄ではいかないところがあるけどとっても有能だということね。
嫌気性接着剤って他の接着剤とは違う特徴を持っていて超個性的!
まるでエイちゃんのようじゃないかーー!
この二人は「空気を読むのが苦手」みたいだぜ。。
嫌気性とは「空気を嫌う」ということですが、その硬化プロセスは、「空気の遮断」、「金属イオンとの接触」の二つの組み合わせによって成り立ちます。手軽で簡単に扱えて、常温でも速硬化できるので、一液無溶剤の接着剤は、例えば、自動車製造用途で、エンジンやトランスミッション、回転対称部品へのネジゆるみ止めや封止など、多種多様な接着用途で使われています。

空気が遮断された状態で、反応開始剤と金属が結合すると硬化が始まります。(左)モノマーが結合を繰り返して硬化が完了します。(右)

従来、嫌気性接着剤塗布の利点は、また同時に課題でもありました。接着剤は、金属と接触すると速硬化が始まります。この反応は非常に速いので、接着する部品もできるだけ短時間で処理する必要がありました。またその反応速度も、接着剤ごとに異なる場合がありプロセスの管理が大変でした。 容積移送式ディスペンサーeco-PEN(エコペン)は、その優れた気密性が特長です。接液部ハウジングは、メタルフリーで嫌気性接着剤に反応しない材料を採用し、ディスペンサーの性能を阻害することなく高精度な塗布を行うことが可能です。また、ローターの金属部品は、パシベート処理が施され、硬化を防止しています。接着剤の種類にもよりますが、反応性の高い接着剤を、ディスペンサーに充填したまま3日経っても、そのまま変わらない吐出結果が得られた実績も多くあります。 今回、7社の異なる接着剤メーカーから14種類の嫌気性接着剤を選定して、使用して、eco-PEN450の耐久性と性能についての長期試験を行った結果です。接着剤をディスペンサーに充填した後、約3mℓほど吐出し、通気した後そのままの状態で、32日間放置しました。

嫌気性接着剤による塗布試験

テストの結果、半数以上の接着剤は、32日後でも、通常の吐出性能を保持することができました。また、途中でクリーニングやノズル交換を行えば、約8割のディスペンサーが、継続して使用できる状態であることが確認できました。すなはち、適切なクリーニングプロセスを取り入れて使用すれば、eco-PENはほとんどの嫌気性接着剤に適用できると考察できます。
ワンポイント 完全な嫌気性接着剤の高精度塗布プロセスが必要な場合、接液部オールメタルフリーのディスペンサーRD-EC-MFシリーズをお勧めします。 硫酸などの酸化性材料、嫌気性接着剤、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、イオン液体などの高反応性材料をハイフローで塗布可能です。
例えば、自動車業界の特殊な処理が必要な電解質バッテリー製造プロセスにも使用されます。

マイリスト