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ディスペンサー技術ガイド

ディスペンサーバルブ選定方法

~ニードル・ダイアフラム・ピストンバルブの違いと最適な選定方法~

ディスペンサーの塗布品質は「バルブ選定」で決まると言っても過言ではありません。
同じ液剤でも、バルブ方式が異なれば吐出安定性・液だれ・再現性・メンテナンス性が大きく変わります。
本記事では、バルブ方式の違いが塗布品質を左右する理由として、定量ディスペンサーの最終吐出部に使用されるニードルバルブ、ダイアフラムバルブ、ピストンバルブを題材に選定方法について解説します。粘度・吐出量・液剤特性という3つの観点から比較し、用途別ディスペンスバルブの比較を交えながら実務に直結する選定指針を提示します。
最適なディスペンスバルブ選定を検討中の技術者担当者様に向けて、構造・特長・用途を踏まえて選定ポイントを体系的にまとめました。

各種バルブの特徴

各バルブの特徴

ニードルバルブSV51

1. ニードルバルブ

ニードル弁が上下動して流路を開閉する構造で、微細流量制御を得意とします。
低~中粘度液の微量塗布に適した方式です。

  • 【主な特長】
  • 微量調整性に優れる
  • 応答性が高い
  • 低中粘度の吐出コントロール性が良好
  • 【注意点】
  • 高粘度材料には不向き。
  • サックバック機構がなく液だれ対策が必要。
  • 適用領域:数mPa・s~数万mPa・s程度
ダイアフラムバルブSV62

2. ダイアフラムバルブ

ダイアフラムで接液部と駆動部を分離する構造。 液剤の侵入や固着を防ぎ、シール性に優れます。

  • 【主な特長】
  • 高耐薬品性
  • 高シール性
  • 駆動部と接液部の分離構造
  • 【注意点】
  • 高粘度材料には不向き
  • 大量吐出用途には制限あり
ピストンバルブSV35DA

3. ピストンバルブ

シリンダー内のピストン上下動により流路を開閉。 中~高粘度液を確実に吐出・遮断できる方式です。

  • 【主な特長】
  • 高粘度材料対応(数万~数十万mPa・s)
  • サックバック機構による残圧除去
  • 高耐久
  • 【注意点】
  • 超微量吐出には不向き
  • 応答速度には物理限界あり
バルブ種類 特長 内容
ニードルバルブ 微量調整力 ニードル弁構造のため流路の開閉度が細かく調整が可能。 微量流量の調整に有効。
微量吐出に適する高い応答性 ニードルの上下動による直接的な流路開閉のため、良好な応答性。
低中粘度の吐出性 流路が細く、低粘度の吐出に有効な構造。
ダイアフラムバルブ 耐薬品性 接液部材質に UHMW(高分子ポリマー)を採用し、薬液に対し高耐久。
低粘度のシール性と密閉性 ダイアフラム構造でシール性が高いため、高密閉性。
硬化型の液のバルブ部での硬化を防止。
接液部と駆動部の分離構造 ダイアフラムが隔壁となり、液剤の駆動部への侵入を防止。
硬化性材料や揮発性材料にも対応しやすく、トラブルリスクを低減。
ピストンバルブ 高粘度液剤の塗布に最適 流路が広いため高粘度液剤を流しやすい形状。
サックバック機構で液だれ防止 高粘度液剤特有の吐出後の残圧をサックバック機構で解消。
高耐久 シーリングヘッドとダイアフラムにUHMW の採用で高耐久を実現。

バルブの選定

粘度で比較した場合の選定

粘度は最も重要な選定指標です。液剤の粘度を以下のように定義した場合のバルブの選定 についてご説明します。

    【液剤粘度】
  • ・低粘度(~1,000mPa・s)
  • ・中粘度(1,000~50,000mPa・s)
  • ・高粘度(50,000mPa・s~)
バルブ種類 ストップ機構 低粘度 中粘度 高粘度
ニードルバルブ 押し止め
ダイアフラムバルブ 押し止め
ピストンバルブ 押し止め

【低粘度】
ニードルバルブとダイアフラムバルブは、流路が狭く、低粘度寄りに設計されているため 低めの粘度の塗布は得意としています。どちらも押し止めの機構で、液剤を止める際には押して止めます。低粘度の液剤の場合は、押し止めることによって液剤をノズル先で切ることができます。
これにより、液切れの良い塗布が可能になります。ニードルバルブとダイアフラムバルブの使い分けは、液剤特性等に応じて変化します。


【高粘度】
ピストンバルブは、流路が広くなっており、高粘度に適した設計となっています。また、ピストンバルブには、高粘度剤の液だれを防ぐ機構としてサックバック機構が備わっています。
高粘度材料は液剤を流すために高圧をかけます。高圧にすることで蓄圧され、吐出後に残圧としてノズル先端から液だれが発生します。サックバック機構は、残圧でノズルから出て行こうとする液剤を引き戻す役割をしてノズル先端で液を止めることができます。


【中粘度】
中粘度液剤は、どのバルブも可能性のある液剤になります。中粘度の幅が広いため、高粘度寄りの中粘度か、低粘度寄りかで判断が分かれます。糸引き性のあるものはビストンバルブで引いた方が良い場合もあります。
フィラーの含有など流路確保が必要なものもピストンバルブが有利になります。1,000mPa・sに近い中粘度では、ニードルバルブが有利になります。中粘度の場合は特に液剤特性を見極めてバルブ選定を行うことが重要です。


吐出量で比較した場合の選定

吐出量でもバルブによっての得意不得意があります。どの程度の吐出をしたいかによって バルブの選定が変わってきます。 ここでは、各吐出量を以下に定義して選定を行っていきます。

液剤吐出量
区分 体積( mL/shot) 質量(g/shot)
ρ=1.0
質量(g/shot)
ρ=1.5
微少量 0.001〜0.02 0.001〜0.02 0.0015〜0.03
少量 0.02〜0.2 0.02〜0.2 0.03〜0.30
中量 0.2〜1.0 0.2〜1.0 0.30〜1.50
大量 1.0〜3.0 1.0〜3.0 1.50〜4.50
バルブ種類 微小量 少量 中量 大量
ニードルバルブ
ダイアフラムバルブ
ピストンバルブ

【微少量塗布】
微少量塗布はニードルバルブの「鋭角なニードル形状」による微量調整力で対応が可能です。変化としては、ストローク調整による分解能に差が出ます。1 目盛り当たりの吐出量 変化の少なさは、先細りのニードル形状に軍配が上がります。この微調整能力が極限の微小塗布領域での調整に活きてきます。
この領域はニードルバルブだけの特権的領域になります。


【少量塗布】
少量塗布領域は、ダイアフラムバルブも対応可能になります。ダイアフラム全体でシール する構造は高いシール性を誇り、少量塗布の再現性を高めます。


【大量塗布】
ある程度の量を出す場合(1㎜以上の線塗布等)やタクトを考慮して速度を上げたい場合には、ピストンバルブが有利になります。オリフィスが大きいため、他のバルブよりも流量 を稼ぐことが可能です。但し、粘度が低い物は苦手としますので粘度と吐出量を合わせて検討をする必要があります。


実際には、液剤質量(比重による)での定義もあるため体積量だけでは、表現が難しいところもあります。


液剤で比較した場合の選定

液剤での選定基準としては、液によっては完全にバルブを選びます。例えば、瞬間接着剤や嫌気性接着剤はダイアフラムバルブ 1択になります。理由としては、金属イオン反応をするため接液部が樹脂である必要があるためです。
溶剤についても主にダイアフラムバルブが使われることが多くなります。接液部と駆動部を分けており、耐溶剤性の高い樹脂で構成されているため溶剤塗布に向いています。
シリコンについては比較的高粘度が多いためピストンバルブが使われることが多く、サックバック機能を用いて液ダレなく塗布が出来ます。エポキシやウレタンの中粘度はニードルバルブでの対応も可能です。
UV接着剤はどのバルブでも対応が可能ですが、UVに嫌気成分を付与された液剤もあるためその場合はダイアフラムバルブとなり、UV シリコン系の液剤の場合はピストンバルブが使われます。

液剤 ダイアフラムバルブ ニードルバルブ ピストンバルブ
シリコン
エポキシ
ウレタン
UV
瞬間
嫌気
溶剤
コーティング

バルブの選定は掛け算

バルブの選定は掛け算

バルブの選定を様々な角度で見てきましたが、1 つの指標では選定できないことがわかります。低粘度であればニードルバルブで良いかと言えばそうではなく、低粘度でも瞬間接 着剤の場合はダイアフラムバルブになることや、エポキシでも微少量であればニードルバルブを選定し、高粘度の場合はピストンバルブを選択するなど、2つ以上の条件での掛け 合わせによって選定が成り立ちます。
ディスペンスバルブの選定は、液剤×粘度×吐出量(タクト)になります。更に希望条件を加えることでより明確にバルブの選定が可能です。希望条件とは例えば以下のようなものです。


  • ・糸引き軽減
  • ・塗布サイズの安定化
  • ・塗布位置の周囲スペース

糸引き軽減が必要であれば、サックバックが有効になる場合もありますし、塗布スペースによってはバルブやノズルサイズも検討対象に入ります。
中粘度レベルの液剤においては グレーゾーン となるため、より見極めは慎重に行う必要があります。タクトの兼ね合いで圧力を多めにかける場合は、残圧が残りやすいため サックバックが必要になったり、逆に中粘度でも低めの液剤の場合はニードルで押し止めの方がノズル先で液剤がぴたりと止まったりします。この辺りは塗布テストで見極めることをお勧めします。

項目 ニードル ダイアフラム ピストン
粘度域 低〜中 低〜中 中〜高
微量塗布
高粘度 ×
サックバック なし なし あり
耐薬品性

まとめ

ディスペンスバルブの選定は、単一の条件では決定できません。
「液剤特性」「粘度」「吐出量(タクト)」「求められる精度・安定性」という複数条件の掛け合わせによって最適解が導かれます。

低粘度であればニードルやダイアフラムが有力候補となりますが、瞬間接着剤のように材質制約がある場合はダイアフラムが必須になります。
中粘度域では糸引き性やフィラー含有の有無、タクト条件によってニードルとピストンの判断が分かれます。
高粘度領域では、残圧除去機構(サックバック)を備えたピストンバルブが安定吐出に有効です。

つまり、バルブ選定は「粘度だけ」「吐出量だけ」で判断するものではなく、総合的な技術検討が不可欠です。
特に中粘度のグレーゾーン領域では、実際の塗布テストによる評価が最も確実な判断材料となります。

最適なバルブ選定は、塗布品質の安定化、生産タクト向上、不良率低減に直結します。
液剤特性に応じた適切な方式選定と事前検証が、安定したディスペンスプロセス構築の鍵となります。